
小泉今日子×浜崎貴司 〜 ”繋がる” 文化的・体験的プログラムvol.2 ~

INDEX
子どもたちの「はじめて」が繋がった夜
小泉今日子さんの発案ではじめて、様々な背景を持つ子どもたちを招待した音楽ライブが実現したのが昨年2024年の12月。その記念すべき初回は山形カシオさんのご支援があり、第二回目となる今回はバンド・FLYING KIDS浜崎貴司さんのご協力で、取り組みは受け継がれています。
データとして、日本にはひとり親世帯が母子で約120万、父子で約15万。そこには非正規雇用の多さや養育費の未払いといった問題が横たわり、制度や支援策が重要な課題と言われています。
本取り組みは意図として、参加した子どもたち、関係したスタッフたちも、いろいろな課題に直面した時にこのような機会や繋がりを思い出して欲しい。これが、そんな大人の姿を見ることで「私たちもあのようになりたい」と、未来に向けて撒いた種となるよう願って実施されています。

会場に一歩足を踏み入れた瞬間から、特別な日のワクワクが広がっていました
2025年6月14日、東京・六本木のEX THEATER ROPPONGIにて、「浜崎貴司 還暦GACHIスペシャル 60祭 2days ~Road to 100~」が開催されました。それは主催・浜崎さんを筆頭に、総勢19組のアーティストが出演し、音楽を愛する人々の心を熱く揺さぶった一夜でした。
本イベントは、UPDATERとご縁のある小泉さん発案と声がけで、「“繋がる” 文化的・体験的プログラム」の、第二回目という位置づけもありました。それはTBSラジオ「サステバ」でも話題となった、経済格差に起因する文化的・体験的格差の是正を目指す試み。ご理解あるアーティスト・企業・NPOを巻き込みながら、継続的な支援を実現するプロジェクトです。
特別な想いのこもったプログラム
今回招待されたのは、NPO法人WooMoo運営「子どもの居場所事業Tsubame」に通う子どもたち。以前、不登校を経験した子もいれば、さまざまな特性を持った子もいました。

「怖がらなくても大丈夫、あなたらしく生きていける道への扉が待っているよ!」──Tsubameが差し出すあたたかな扉
浜崎さんと小泉さんは、このプログラムへの特別な想いを込め、10席分のチケットを「半分ずつ自らの負担で」用意くださいました。さらには浜崎さんからマネージャーさんを経由し関係各所に周知を徹底、子どもたちを迎え入れる準備が整えられました。
今回参加した子どもたちの中には、集中力に課題があったり、音や光に敏感だったりと、さまざまな特性を抱えている子もいます。そんな子どもたちが安心して過ごせるよう、会場全体があたたかく安全な空間となるよう配慮されたことが、この日の成功につながりました。
開演直後から浜崎さんの軽妙なトークと会場の一体感が、子どもたちの緊張を解きほぐします。間近に感じるアーティストの生の歌声、観客の生の反応、あたたかい空気。子どもたちも笑顔を見せ、手を振り、体を揺らしながら音楽を楽しんだものの、長時間のステージに徐々に疲れが出て、どうしても休憩が必要な子どもたちもいました。
そこで、UPDATERスタッフが「今はおやつタイム!」と提案。その時間で逆に、子どもたちと「どんな漫画が好きなの?」「ダンス習っているんだ、すごいね」といった交流で楽しみました。すると、それぞれが持っているという特性も感じることなく、みんなとても素直で良い子たちと再実感できました。
そうこうしている間に元気を取り戻し、客席へ戻れば、待ちに待った「推しアーティスト」の登場。
さらに小泉さんの登場で、子どもたちのボルテージは最高潮。「キョンキョーン!」と大きな声で呼びかけ、約3時間に及ぶライブが終わる頃には、みんなが「は〜!楽しかった!」と、幸せでいっぱいの様子でした。
アーティストがステージ上で間違えても、笑って「もう一回やろう!」と言っていたことやその姿勢も、日々新しい挑戦や失敗に対して不安を抱える子どもたちにとって、頼もしい励ましになったはず。

憧れの人に会える!胸の高鳴りが止まらない子どもたち

年齢も個性も違うみんなへ──一人ひとりにそっと寄り添う“気持ち”がそこに
ライブ終了後、浜崎さんと小泉さんのご厚意で子どもたちはステージ裏に案内され普段なら入れない場所で、これからお二人が戻って来るドキドキ感の中、胸を高鳴らせる子どもたち。お二人が現れると、まずは還暦のお祝いで、自分たちで用意してきたお花をプレゼント。お返しの優しい言葉と笑顔に包まれ、さらには小泉さんから本のプレゼントまでいただきました。
浜崎さんの喜びも、後にいただいた「またぜひ、こういう機会をつくっていきたいと思っています」という言葉に集約されていました。
親子を刺激する音楽の力
子どもたちの感想には「浜崎さん、お話が面白かった!また元気にライブしてください!」「生の歌はびっくりするくらい上手」「ライブ会場って思ったよりうるさくなかった」など興奮と感動の洪水。「歌ってこんな楽しかったんだね」という感想もありました。
保護者の感想も印象的でした。
「数年前、子どもが学校に行けず、社会から取り残されたような日々を送っていました。もともと音楽が大好きだった娘が今日のように友達とライブを楽しめる日が来るとは思えなかった。娘にとっても私にとっても、今日の日はご褒美のような時間でした」「親として学校に行けない我が子の未来に悩み落ち込む日々でしたが、音楽を楽しみ、大きな声で応援する我が子を見て涙が出ました」。
音楽が生んだ希望は、子どもたちだけでなく、家族の心も揺さぶっていたのです。
WooMoo副理事長・廣木さんは「このような体験は、子どもたちが『自分は多くの人に大切にされている』という実感と励みになる。一度きりで終わらず、参加後も『繋がり』を感じられる継続的な仕組みづくりが大切だと思う」と言います。
テレビやラジオで活躍するアーティストの姿を目の当たりにし「また会えるかもしれない」「今も見守ってくれている」と思える「繋がり」が、体験の記憶を希望に変えていくでしょう。

はじめてのライブハウス!はじめての生ライブ!
未来に向けて撒かれた種
こうした居場所を利用する子どもたちは、様々な事情から、音楽に親しんだり、ライブを体験したりする機会があまり多くない子もいます。今回のプログラムをきっかけに、将来エンターテイメントのお仕事をしたいという夢に繋がることもあれば、その手前の段階で、そもそも健やかに生きる希望となるかもしれない。そんなことを再確認できた、大切な一日になりました。
この経験は、子どもたちにとって「ずっと残る宝物」かつ、「何度でも思い出せるお守り」となっていくでしょう。文化的・体験的な格差を超えて希望を与える取り組みは、今後も継続していく意義があるのです。
特別な夜を実現させた浜崎貴司さん、小泉今日子さん、すべての関係者、そしてTsubameの皆さまに深い感謝を捧げます。

ライブ後はキラキラの笑顔に
※第一回目「“繋がる”文化的・体験的プログラム」取り組みはこちら
WRITER

平井有太
1975年東京生、School of Visual Arts卒。96~01年NY在住、2012~15年福島市在住。2013年度第33回日本協同組合学会実践賞受賞。福島では福島大学の客員研究員として農の復興事業をJA新ふくしま(当時)、福島県生協連と協同し、市内すべての田んぼ/果樹園の含有放射性物質を測定。根幹にあるエネルギー問題と、循環型社会におけるサステナビリティとの関わりを深化させる。
2015年より、みんな電力(現UPDATER)と合流。